こんにちは。
群馬県前橋市、高崎市で中小企業のマーケティング支援、採用クリエイティブ、ライティング、集客支援をしているT.H.MARKETING(ティーエイチマーケティング)の徳永大祐です。
群馬県を中心に東京や埼玉の中小企業のマーケティング分野、クリエイティブ分野をご支援しています。
今回は「想いをカタチにしつつ視認性をしっかり維持するロゴマークとグッズの開発事例」についてです。ここでは、熱い想いを抱いて創業した事業者の創業時から掲げるロゴマークやグッズの開発経緯と実績をご紹介します。
まずは、お客様の情報、プロジェクトを担当した経緯をご説明します。
Contents
お客様情報・プロジェクト概要
■お客様名:群馬SAKE TSUGU(群馬の日本酒を応援する事業)
■開発内容:ロゴマーク、グッズ
■WEB:https://www.gunma-saketsugu.jp/
■ご依頼内容
・想いをカタチにしたロゴマークが欲しい
・想いを伝えるためのグッズデザイン、制作を依頼したい
経緯:どのようなプロジェクトなのか
群馬SAKE TSUGU様は群馬の日本酒を応援する事業者です。
群馬県内で造られる特定の日本酒を応援するのではなく、「群馬の地酒」を応援しています。もともと県庁職員だった代表の清水さんがスタートさせた事業で、群馬の地酒が少しでも飲んでいただけるように、少しでも楽しんでいただけるように様々なイベント、コミュニティづくり、体験の場を作っています。
清水さんが群馬SAKE TSUGUをスタートさせる時に、たまたま偶然共通の知人を介して知り合い、そこで話をする中でロゴマーク開発のご依頼をいただくことになりました。
清水さんの創業に関する想いや活動状況などは、こちらからご覧いただけます。
どのようにプロジェクトを進めていったのか
ロゴ開発の場合は、経営者の想いや事業に対する考え、将来のビジョンなどをヒアリングしながら、そして、ライバルの状況や市場環境を捉えながら開発を進めます。特に創業時のロゴマーク開発は創業に対する想いが強いのですが、想い優先で開発すると事業推進の際に問題が生じることがあります。なので、市場環境やライバルをしっかり把握しなければいけません。
しかし、今回の場合、そもそも地酒(地元の日本酒)を応援するという事業自体が他に存在せず、群馬SAKE TSUGUの競合に該当する企業や団体は見当たりませんでした。つまり、市場もライバルもほぼ無いに等しい状態だったのです。
市場が無いということは、つまり、欲しいと思う人が居ないと考えることもできます。反対に新市場を作れるとポジティブにとらえることも出来るかもしれません。本来、マーケティングの観点でいえば、市場が小さい、あるいは無いという状態は需要が無いと考えます。この点は清水さんも理解されており、「それでも敢えて突き進むのだ」という強い想いを感じましたので、その想いをしっかり組んだロゴマーク開発として進めていくこととなりました。
とはいえ、想い優先では創業者の自己満足を満たすロゴマークになりかねません。ですので、群馬SAKE TSUGUと出会う方々がロゴマークを目にした時のことを想像し、どのようにビジュアルとして表現したら、群馬SAKE TSUGUのビジョン達成に近づくかを考えながら進めました。ロゴマークが完成後に、グッズ開発になります。グッズ開発理由、進行に関しては後述します。
あまり飲まれていない日本酒
数あるお酒の中で日本酒はあまり飲まれていません。消費量が少ないのです。平成に入ってから少しずつ減少傾向が続いています。農水省の発表によると、令和4年の出荷量は40万キロリットルでした。日本酒の海外輸出は増えていますが、国内出荷量は増えていません。
日本国内の20歳以上の人口は約1億人なので、40万キロリットルを均等に飲んだとすると、1人あたり4ミリリットルになります。もちろんお酒が苦手な人、飲まない人、日本酒が嫌いな人もいるので、1人あたりは恐らく100ミリリットル程度になるでしょう。栄養ドリンク1本分くらいを1年に飲むという感じです。そう考えると、日本酒の消費量は多くありません。
そのうえ更に、感染症拡大で宴会などが自粛されました。その当時の影響と習慣やライフスタイルの変化によって消費量は変わってくると思われます。群馬に限らず、今の日本全体における日本酒は、そういう苦境にあります。なので、群馬県内で見ても、それと同じような傾向になっていると考えられます。
良いイメージの無い日本酒
消費量が少なくなってきている状況の日本酒ですが、どういうイメージを持っているでしょうか?
おじさんが飲むお酒、不味いお酒、アルコールが強くて苦手、酒好きのためのお酒のようなイメージを持っている方が多いのではないでしょうか。
これは代表の清水さんがおっしゃっていましたが、「若いころの美味しくない日本酒体験」が影響しているのではないかということです。現在(2024年)から20年ほどまでの2000年代初頭は、居酒屋などの飲み放題で日本酒が出されていました。そこで出る日本酒は安い日本酒です。飲み放題専用みたいなものです。飲み放題に飛びつくのはお金の無い大学生です。大学生の飲み会となると、お酒の味より場も盛り上がりが重要なので散々飲み明かします。宴会の種版になると日本酒などを飲み、最終的には皆がべろんべろんに酔って、その場で吐いたり、二日酔いで苦しむ経験をしていました。その苦い経験を覚えると、日本酒は美味しくないイメージになるのではないかということです。
日本酒は日本の伝統産業で「国酒」と言われています。発酵技術によって生まれたお酒で、伝統的なお酒です。水がきれいで良質な米が無いと作れませんので、本来は素材の味を活かした美味しいお酒のはずなのです。
にもかかわらずイメージが悪く、古いものと思われたり、新しいお酒に取って代わられたり、ライフスタイルや価値観の変化で苦境に立たされているのです。
群馬の地酒で盛り上がるコミュニティづくり
そんな日本酒ですが、群馬の日本酒の魅力に魅せられた清水さんは群馬SAKE TSUGUを立ち上げました。群馬県酒造組合を巻き込み、地域の酒屋さんや群馬の地酒好きを巻き込んで、皆で楽しめるコミュニティを作って群馬の地酒を盛り上げる活動を始めました。その先導役が群馬SAKETSUGUということになります。
イベントを開催して盛り上げるという策もありますが、それ以外にオンライン上でも盛り上がれる場を作ることで、県外で群馬の地酒を愛している方も参加ができますし、イベントに参加できない方も気軽に楽しめる場を作れます。そこで「群馬SAKE TSUGU ONLINE」というコミュニティサイトも制作されました。
これからの新しい需要者の開拓が必要
群馬の地酒を盛り上げるためには、今いる群馬の地酒好き、お酒好きにアプローチすることも大切ですが、これからお酒を飲むことになる若い方々へのアプローチも欠かせません。美味しい群馬の地酒でも知られなければ興味を持ってもらえませんし、伝えることでイメージをガラッと変えることだって夢ではありません。お酒好きの若者もいるため、とにかくアプローチはしなければいけません。そこで「群馬SAKE TSUGU ONLINE」というアプローチもありますが、これは既に群馬の地酒好きが集い、横のつながりを作って楽しむサイトなので若者特化ではありませんでした。
未来の需要者である若者を巻き込むためにはどうすればいいか。考えに考えた清水さんは「群馬の地酒PR動画コンテスト」という企画を学生向けで実施することに決めました。
この取り組みは別コラムで詳しく解説します。
この先の群馬の地酒の発展を考えると、若者へのアプローチも必要であり、そうなると群馬SAKE TSUGUは若者が受け入れてくれるようなビジュアル、存在感でないといけないなという考えが出てきました。
日本酒らしくし過ぎず、離れすぎず
日本酒の状況、群馬SAKE TSUGUのやろうとしていること、今後に向けての課題がわかった時点でロゴマーク開発に取り掛かります。
日本酒の多くは筆文字で日本らしいデザインの名前が描かれています。これが「おじさんっぽい」とか「古いイメージ」になってしまっているのだろうと思いました。ラベルデザインに関しては、最近はポップなデザインの日本酒も出て来ていますし、群馬SAKE TSUGUのロゴマークは従来の日本酒っぽくしない方が良いであろうと考えました。
しかし、かといて日本酒から完全に離れたようなデザインでは群馬の地酒らしさが出ません。屋号に「日本酒」とか「地酒」が入らないので、すぐにどういうものかを理解できるようなデザインにしておきたいなとも考えました。ちょうど間を取るような、絶妙なところを狙いにいかなければいけません。
文字を絵で表す
そういったことを考えている時にふと「酒」という感じが目に留まりました。様々なアルコールがある中で、その呼び名に「酒」が入っているのが「日本酒」「地酒」だなと思ったのです。発泡酒というのもありますが、「酒」と言って思いつくのは日本酒ではないのかなと。
酒という漢字の成り立ちを調べてみると、もともとは「酉(とり)」という字が期限だったそうです。「酉」という字は、酒を造る壺を表したものらしいのです。そこに水を示すサンズイがくっついて「酒」になっています。やはり「水」が大事なのですね。水が良ければ米もよく育ちます。水と米はまさに日本酒の原料。
この「酉」と「サンズイ」を絵で表現できないかと考えました。それがロゴマークのこの部分です。「酉」は壺ですが、お酒を貯める入れ物としては「徳利」もあります。サンズイを盃で表現すれば「酒」という文字を絵で表せます。群馬SAKE TSUGUの「TSUGU」は「注ぐ」という意味でもあると聞いていたので、盃は必要だろうと思ったのです。
群馬SAKE TSUGUは人と群馬の地酒の出会いの場
群馬SAKE TSUGUが創業した時、清水さんとお話をしている時に「群馬SAKE TSUGUは人と群馬の地酒の出会いの場」なのだなと思いました。人と地酒が交わる場所、そのきっかけとなるのだろうと。それを表現するためにゆるく交わる円を作りました。人と群馬の地酒が円で結ばれる、輪を作る。円は少し日本酒らしい筆文字で制作しました。
これでマークが完成し、あとは文字です。文字は全く日本酒らしくないデザインが良いだろうと思っていました。なぜかというと、ほとんどの日本酒は筆文字で書かれており、文字のデザインで日本酒らしさが一発で伝わるからです。少しでも筆文字書体に寄せると、一気に旧来の日本酒の世界観に引き込まれるため、ここは隔絶しないといけないと考えました。そこで、オリジナル書体を制作し、どの種類のお酒にも属さない雰囲気の文字のデザイン(タイポグラフィ)にしました。どちらかというと、少しITやイベントっぽいイメージです。
最後に色の選定ですが、これはT.H.MARKETINGとしては「青」を推しました。それは「水」を示すためです。日本酒には水が不可欠ですし、米作りにも水が不可欠です。その米は水が良くないと美味くできません。そして、青は飲料部門だとミネラルウォーターなどの水のラベルでよく使われる色です。その清涼感は日本酒においては新しく、若い方に受け入れられやすいのではないかと考えました。こうしてできたのが現在のロゴマークです。
クラウドファンディングの返礼品としてのグッズ開発
清水さんは創業後すぐにクラウドファンディングを始めていました。群馬の地酒を楽しむイベントを地元の老舗旅館で開催する内容で、見事達成しました。
その支援者に対する返礼品として、グッズ制作が発生しました。制作するグッズは「オリジナルポロシャツ」と「シール」です。支援金のランクに応じて返礼品のグッズは変わりますが、群馬の地酒と一緒に贈るグッズとして制作することとなりました。
ポロシャツは背中部分と胸部にオリジナル印刷(名入れ)を施したものです。背中部分は、群馬の地酒を造る各蔵の代表的な地酒の銘柄をプリントしました。胸部は群馬SAKE TSUGUのロゴをプリントしました。ポロシャツの色味はロゴ制作の際に決めたブルーを採用しました。
シールは群馬SAKE TSUGUのロゴを配したもので、「群馬の地酒を応援しています」という文言が含まれており、貼っていただけると群馬の地酒PRにつながるものとなっています。
増えてきた群馬の地酒消費量
ここで紹介した実績以外の取り組みとして、群馬SAKE TSUGUは「群馬の地酒PR動画コンテスト」を開催し、有志学生に動画企画を考えていただき、動画に仕上げて評価を得て競争するコンテストを実施しました。この件は別コラムで詳しく解説しますので、ぜひご一読ください。
これらの取り組みを続ける中で、群馬SAKE TSUGUの活動が大きく影響していると思いますが、群馬の地酒の消費量が少し増えてきたのです。もちろん群馬県酒造組合や流通の頑張りもあったと思いますが、造り手と売り手だけではない群馬SAKE TSUGUという第三の力が応援に加わることで、受け手の感情も変化し勢いが少し増したのではないかと思います。