なぜ通販は「今ならもう1個お付けします」と言うのか?

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平日の日中のテレビや夜中のテレビでは、よく通販番組が放送されています。誰もが一度は観たことがあるはずです。

通販番組では健康食品や健康グッズ、家電、ウォーターサーバーなどが紹介されています。説明する方はプロのセールスマンで、軽快なトークで商品の紹介が一通り行われます。欲しいと思わない商品でもついつい観てしまい、「案外良いかもな」なんて思ったりしてしまうこともあります。そんな経験は無いですか?

通販番組の中で紹介される商品のカテゴリーとしては、「健康食品」が圧倒的に多く、よく目にします。青汁や野菜飲料のような健康飲料、ビタミン類やコラーゲンのようなサプリメントが多いです。

なぜ通販では健康に関する商品が多いのか?

通販と言えば健康食品やサプリメント、美容に関する商品がすぐに思い浮かびます。それだけ私たちは昔から、普段から目にしているというわけです。

しかし、なぜ健康や美容に関する商品が多いのでしょうか。

論文などの確かな答えはありませんが、あくまで仮説として考えられるのは、

●「健康」や「美容」は永遠のテーマだから
●「健康」や「美容」は手軽に取り組めるものだから
●「健康」や「美容」は感情に訴えかけやすいから
●「健康」や「美容」は規制がゆるいから
●「健康」や「美容」はリピート購入してくれやすいから
●「健康」や「美容」は容量が小さい割に利益率が良いから
●「健康」や「美容」は輸送コストが安いから

という理由です。

簡潔にまとめると、

●欲しがる人が多い
●何度も買ってくれる
●売りやすい

という理由になるでしょう。

買う側と売る側の利害が一致しています。

なぜシニア向けの商品が多いのか?

健康や美容への関心の高さは年齢を重ねれば重ねるほど高くなります。身体の様々な箇所で不調が出てくるからです。美容も同じで、お肌のハリが弱くなったり、しわが増えたりなど不調が発生するからです。健康や美容に関することでの調子が悪いからこそ、それらを補ってくれる商品に目が向きます。

それと、テレビはシニア層と相性が良いメディアだからです。今のシニア層が若い時はテレビの黄金時代でした。毎日テレビを観て情報を得る生活をしていたでしょうし、娯楽もテレビで享受するような体験をよくしています。なので、普段からテレビを観る、ラジオ代わりにつけておくという方が多いはずです。接するメディアとして圧倒的にテレビの割合が大きいので通販番組で紹介する商品はシニア向けが多いのです。

さらに、通販であれば自分でお店に出向いたり、いちいち商品を手に取って自分で情報を得なくても勝手に情報が流れてきます。購入は電話一本で可能ですし、代引きや銀行振込、クレジットカードで支払えるので売買成立が非常に楽です。大変な思いをしてお店に行かなくても買い物が出来ますし、望んでもいないのに店内で接客されて煩わしい思いをすることも無いのです。ストレスフリーに買い物ができる場が通販番組になっていると言えるでしょう。

通販というスタイルは販売者側にとっても都合が良い

通販番組で商品を売るのは、買い手だけでなく売り手にとっても都合が良いことが多いです。通販であればお店を持たなくて良いので、お店を作って維持する固定費が安く済みます。販売員もレジスタッフも要りません。電話対応をするオペレーターだけで良いので人件費も安く済みます。しかも、オペレーターは外注できますので雇用する必要はありません。売り手にとって頭を悩ませる要素がかなり少ないのです。

通販というスタイルで相性の良い相手がシニアで、相性の良い商品が健康や美容に関するもの。これを理解しているのは、特定の会社だけではありません。色んな会社がこれに気づいて仕掛けてきます。その結果、競争が激しくなってきます。

まずは買ってもらわないと始まらない

競争が激しくなってくると、何とか自社の商品を選んでいただかなくてはいけません。これが訪問営業や法人営業であれば、リアルで会って直接話をして関係性を深めたり、何度も時間をかけて説明ができますが、通販の場合は直接会うことはできず、一方的に売り手から情報を発信し続けることしかできません。しかも、その時間は決まっていて短い時間しか使えません。これだけ限られた条件、シビアな状況で自社商品を売っていかなければいけないのですが、これはなかなか大変なことです。

そうなると、ライバル会に勝つために重要となるのは、「お客様に近づくこと」です。お客様と関係性を深めたり、いつでも連絡できる状態になれば、こちらの提案や説明を快く聞いてくれる可能性が高くなります。こういうお客様が増えれば売れやすくなります。しかも、労力をかけて苦労せずに。

そうするためには、まずはとにかく1回だけ買ってもらってお客様の情報を入手することが重要となります。お客様のお名前、住所、電話番号が分かれば、資料を郵送したり電話で営業ができます。一度買ってくれているので、最初ほど警戒心は無くなっているはず。売り込んでも比較的聞いてくれやすいのです。

なぜ「今ならもう一個お付けします」と言うのか?

「とにかく1回だけ買ってもらう」ということが、この先の商品の販売可否を決める至上命題となることが分かりました。この考えは自社だけでなくライバル会社も持っているはずです。

とにかく選んでもらうために何とかアピールしていかないといけない。出来るだけインパクトがあり、お客様のメリットが大きいものにしたほうが選んでくれる可能性が高くなります。

そこで出てきたのが「今ならもう一個お付けします」です。

「今ならもう一個お付けします」と言って大丈夫なのか?

通販会社の狙いを聞いてもなお「1個無料で渡してしまっているのに大丈夫か?」と思う方がいるかもしれません。でも、大丈夫です。

先述のとおり顧客情報が得られれば追加の売り込みや他の商品やサービスを紹介するチャンスが出来るので、無料で1個渡しても充分利益を取り返せるチャンスができます。

また、健康食品やサプリメントは継続するもので、継続されればされるほど利益になります。効果を感じてくれたら継続意欲が高まるので、効果をしっかり感じていただくために無料で渡しても良いと判断できます。しかも、無料で1個渡すことで継続習慣がつきます。継続習慣がつけば追加購入はすんなりすすむでしょう。

「2個でも同じ値段」と言うより「今ならもう一個お付けします」が良い

「今ならもう一個お付けします」というこの言葉も実は重要です。同じ意味として「2個でも同じ値段」という言い方がありますが、どちらが心踊るでしょうか?

本当に微妙なニュアンスの違いですが、「2個でも同じ値段」と言うと、「2個購入した」という認識になるように考えられます。「購入する=お金を払う=お金を失う」ことになるので、喪失感がやや大きくなります。

対して「今ならもう一個お付けします」というのは「1個購入したら、1個もらえた」という認識になるでしょう。そうすると、自分が意思を持って買ったのは1個だけ。それなのに1個もらえたので、1個分のお金を払う(失う)だけとなり喪失感が前者よりやや少ないと考えられます。

結果は同じとなるのに、表現を変えるだけで感じ方が大きく違ってきます。この「今ならもう一個お付けします」という言葉も秀逸なアイデアですね。

「誰に、何を、どうやって伝えるか」は
マーケティングの重要課題

通販会社はしっかりと売り物と合うターゲットを選んで、そのターゲットにアプローチしやすいメディアを使って、心が動く伝え方で伝えています。

「誰に、何を、どうやって伝えるか」をしっかりと練りこまれて実行されているのですが、実はこれがマーケティングであり、成果を手にするために重要な課題となります。

マーケティング用語で3M(スリーエム ※会社名ではありません)と言いますが、「正しいマーケット(Market:ターゲット)」に「正しいメディア(Media:媒体)」を使って、「正しいメッセージ(Message:伝えること)」を伝えることで成果が出るようになるというものがあります。どれかが1個でもずれてしまうと成果が出にくくなります。例えば

ターゲットが高齢者なのにSNSを使ってしまっては、思ったような成果が出ないでしょう。

当たり前のことを論理的かつ丁寧に考えると
その先が見えてくる

「誰に、何を、どうやって伝えるか」は、特に難しい話でも理論でもありません。どれか1つがズレただけでうまくいかないのも分かります。難しいことではなく、シンプルなことなのですが、実際に取り組もうとすると案外抜け漏れが発生してしまいます。

マーケティングは、意外と当たり前のことを論理的に、そして丁寧に考えていくことが肝心です。それができれば、どういう言葉を作るべきか、どういうことにお金をかけるべきかが判断しやすくなります。

言葉やデザインを作るのが苦手なら専門家に依頼すれば良いですし、必要な媒体が決まれば、それを購入すれば良いというわけです。

ここまで論理的かつ丁寧に思考ができていれば、例えばデザイナーにビジュアル作成を依頼する時に

「ターゲットはこんな方です」

「こういう目的を達成したいと考えています」

「ターゲットはこういう人なので、こういう伝え方にします」

「こういうキャッチコピーにします」

「商品パッケージは優しいイメージなので、やさしさをWEBサイトでも出したいです」

というように具体的に依頼できます。

そうすれば、デザイナー側も深い理解ができますし、鋭い質問や良い提案をしてくれやすくなるでしょう。

依頼する側もされる側も明確なゴールイメージを持つことができ、それが先々を明るくしてくれます。

そうやって良いスパイラルが生まれる瞬間を、マーケティングは作っていくのだと考えています。

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